Sensing Project

本プロジェクトについて

本プロジェクトは,超音波と機械学習を用いて,浴室内における人の位置や行動の推定とバイタルセンシングを行っています.

研究背景

近年,浴槽内での溺死及び溺水により死亡事故が増加しており,交通事故による死亡者数を上回っています.浴室事故の原因として,急激な温度変化によるヒートショック,異常事態発見の遅れなどが挙げられます.こうした社会的背景から,浴室事故の未然防止と対策が求められています.私たちの研究では,プライバシーを侵害せず,低コストな点から超音波を用いて浴室内のセンシングを行っています.

研究内容

1.位置推定

超音波センサを用いて,対象物に向けて超音波を照射し,反射した波を受信し,相互相関計算をすることで対象物の位置を求めます。また,そのような信号処理をしたデータを機械学習に入力することで対象物の映った深度画像を生成し,三次元空間で対象物の位置を推定します.

2.行動推定

環境音情報や加速度センサを用いて,浴室内での人の行動を推定します.浴室内での行動を分類することによって,正常と異常の判断を行うことが可能となり,最終的には転倒など危険な状態を検知することを目的としています.

3.音響シミュレーション

1,2のような実測での実験はコストがかかります.そこでシミュレーションを用いて実際の入浴環境を模擬し,実験コストの低減を行っています.本研究では,音響シミュレーション手法の1つである音線法を用いて,対象物の位置推定を行っています.実測環境と同じ環境をシミュレーション上でも再現し,マイクで受信したデータを信号処理することで対象物の位置を推定しています.シミュレーション環境ではセンサ位置や浴室形状,対象物の大きさなどを自由に変更できることから,実測では不可能な多種多様なデータを取得できるというメリットがあります.

4.空間超音波を用いた非接触バイタルセンシング

近年日本で増加傾向にある生活習慣病の予防には,日常的なバイタルモニタリングによる健康管理が重要となります.そこで本研究では,超音波によるドップラー効果を利用して生体情報である呼吸・心拍を非接触で計測し,バイタルモニタリングを実現します.受信センサであるマイクロフォンアレイの指向性の最適化やビームフォーミング,機械学習を用いてより高精度に計測できるシステムの開発を目指します.

5.時刻同期手法

複数のセンサを用いて計測をする際,各センサ間の時刻同期は必須事項です.そこで本研究では,高精度かつ低消費電力な時刻同期手法について研究を行っています.常時動作するクロックとして,低消費電力な低周波RTCクロックを用い,必要時のみ高精度な高周波TIMERクロックを用いるハイブリッド時刻同期手法を目指します.